ザ グレート モガール    THE GREAT MOGUL

米国系  紅紫の三英はな。花径はおよそ18cm程度の極大輪花。
大柄な草姿で、草丈は高く120cmを越える。性質はたいへん弱く、繁殖も少ない。

米国のウイリアム A ペーン氏が、1957年に作出した品種。
氏は米国で太平洋戦争の前から花菖蒲の改良に取り組み、大戦で敵国日本の植物というこ
とで、花菖蒲が処分されたなかでも、ひとり黙々とこの花の改良をおこなった。終戦後、反日感
情が和らぎ再び花菖蒲が見直されると、彼の所を基点に再び花菖蒲が広まっていった。

また氏は、170品種にのぼる品種を作出されたが、その全てに詳細な交配記録を残している。
日本の平尾先生などが、交配記録を殆ど残されていないのとは対照的である。
米国の花菖蒲品種改良の先駆者的な存在であり、現在も米国花菖蒲会で新品種に与えられ
る最高の賞は、ペーン賞とのことである。氏の花でよく知られているものは、ほかに「イマキュ
リート グリッター」などがある。


このザ グレート モガールという品種は、ペーン翁の作出した代表的な名花の一つとして昔から
有名で、性質が弱く一般的な品種でないにもかかわらず、昭和46年に朝日新聞社から発行され
た「花菖蒲大図譜」や、1981年に発行された「最新花菖蒲ハンドブック」にも登場する。平尾先
生も、当園主の加茂も、まるでノハナショウブを極限まで花弁を丸く大きくしたようなこの花を気に
入っていたものと思われる。姉妹品種に「ビジュエルド モガール」がある。

その性質の弱さ、繁殖の悪さから普及する品種ではないが、加茂はこの品種を親に「邪馬台国」
を作出した。この品種も親ほどではないが性質、繁殖とも弱いが、さらに邪馬台国を親にして、
「紫衣の誉」や「神路の誉」が作出された。これらまで来ると性質も強く、現在各地の花菖蒲園に
普及している。

「ザ グレート モガール」のモガールとは、モンゴリアン、つまり東洋人の意。偉大な東洋人というほ
どの名前である。