棯畑産 ピンク

山口県山口市の下小鯖地区に、棯畑という地名の場所がある。ここに山口県指定天然記念物の棯畑のノハナショウブ群落がある。この群落は、一般的な赤紫色のノハナショウブ群落のなかに、ピンク、薄紅、絞り、純白などの色彩変異個体が多く見られることで、たいへん珍しい自生地である。

本個体は、この下小鯖棯畑のノハナショウブ群落の、土地の地主よりノハナショウブの種子を譲り受け、育成した株の中から選抜した個体である。

本個体は、ピンクの小輪花で、花径約10cmほど。原種のノハナショウブにごく近いが、丸弁で「北野天使」よりやや大きく咲く。後ろは別個体でややくすんだ薄紅花。

草丈は自生地では70cm前後とのことだが、栽培すると100cm以上に伸びた。


栽培してよく観察したところ、棯畑のノハナショウブは、純然たるノハナショウブというよりも、やはり僅かにではあるが、園芸種の花菖蒲と交雑の結果生まれた品種群のように思われる。しかし長井古種よりもはるかに原種に近く、僅かに園芸種との交雑が感じられるという程度のものである。