九十九髪   つくもがみ   TSUKUMOGAMI

江戸系   白地に青の細脈の入る平咲きの六英。花径は約16cm程度の中輪。
葉も花もしっかりと堅く、昔はこういう花を「堅花」(けんか)と呼んだ。花弁に入る
青脈はごく薄く、純白の花になることもあるようである。

当園で保存し、販売している九十九髪は、北海道農業専門学校からいただいた品である。
下の写真がその品だが、どういうわけか青脈が殆ど薄くなり、純白に咲くことが多いので、購入
される場合は、その点ご了承いただきたい。同じ色彩のパターンの「水玉星」も白くなりやすいので、
この花色のパターンは色彩が退化しやすいのではと思っている。また、九十九髪のセルフ実生を
して、この青脈を美しく出させて、「新九十九髪」を作ろうかと以前から思っているのだが、結実があまり
良くない。


江戸古花のなかでも松平菖翁の作出した「菖翁花」と呼ばれている品種の一つで、この菖翁花は
現在10数種類が現存しているものと思われる。この品種は菖翁の花菖蒲品種目録「花菖蒲花銘」
に記載され、菖翁花ではよく知られている「宇宙」などよりもはるかに栽培の少ない希少な品種である。

この写真は東京の明治神宮御苑花菖蒲園で撮影したが、この園は明治天皇の勅命で造られ、こんにち
でも当時品種をそのまま守り伝えているから保存されて来たのであって、他の一般の花菖蒲園では
殆ど見ることは出来ない、文化財的な品種である。

しかし、神宮の花菖蒲園へ行っても、品種ごとの解説がなされているわけではない。それが作出されてから
既に150年以上を経たような、江戸時代の文化財的な品種でも、観客は景色として楽しむ事しかできない。
このホームページを作成したねらいは、そんな花菖蒲園へ行ってもわからない、花菖蒲の個々の品種の
文化や性質について、詳しく紹介することである。