酔美人   すいびじん   SUI BIJIN

江戸系   中生   白地に薄紅ぼかしの受け咲き三英花。花径は14cm程度の中輪。
草丈は低く60cm程度。性質、繁殖は普通。

江戸花菖蒲の古花の一つで、明治18年には現存した記録があり、おそらく江戸後期からの品種。
花弁が垂れず、やや上向きに開くこの花形を「受け咲き」と言って、江戸時代後期の江戸人士の特
に好んだ花形である。この時代は、花菖蒲園で花を園路から見下ろして観賞したため、平咲きや受
け咲きの花が好まれたのではないかと考えられているが、それだけではなく、悪く言えばだらしなく
垂れる花形を嫌い、勢いよく受け咲きに咲く花を好んだところに、江戸っ子の気風や心意気が感じら
れる。

しかし受け咲きの花形は、明治になり外国の文化が日本に入って来ると、古い時代の文化より華美
な風潮を人々が好んだためか、新たには作出されなくなった。

また、この花は、天保年間より堀切で花菖蒲園を開園した小高伊左衛門が、富士登山の帰途相州
から持ち帰った「七福神」という品種を実生して作出したとされる。現存する本種がそうなのかは別
として、江戸時代の花菖蒲の姿を良く伝えている文化材的な花である。