清少納言   せいしょうなごん   SEI SHONAGON

江戸系   中生   気品ある藤紫の三英花。花径は約16cmほどの中輪。殿上の才女を思わせる優秀花。
花菖蒲中の最も代表的な名花の一つ。画像のように一輪の花を見ても気品があり、群生させてもたいへん
美しい。繁殖もたいへん良く、草丈はやや低いが、それでも70cm程度には伸び、花菖蒲園でも多く使われた。

しかし、こんにちでは、リゾクトニア菌が方々の花菖蒲園に広がり、本種はこの菌に弱く、立ち枯れ病のため
枯れた園も多いと思う。たいへん残念でならない。幸い、本種の実生から出た「翠 映」が立ち枯れ病にたいへん
強いので、この品種を実生することで、耐病性のある「清少納言」の作出は難しくはないと思っている。

花形は、花弁の中心部より外側が全面に張り出していて、この弁の形を雨樋に見立て「樋弁」と言った。
これは主に肥後系の花容表現で、肥後系の美意識から作られた江戸花菖蒲であることがわかる。本種の
交配親はわからないが、葉姿などから、伊勢系の血も入っていると考えられている。


本種は平尾先生が、1967年から千葉県市原市の牧野善作氏の圃場を借りて、花菖蒲の品種改良を行ったときに
作出された品種の一つで、同様の作花には、「栄 紫」、「春の海」、「追 風」、「青岳城」、「朝戸開」など、こんにち
一般に普及している多くの平尾先生の江戸系がここで作出された。これらは、平尾牧野系品種とも言う。
この清少納言は、花色の鮮明な明るく美しい花菖蒲を求めた、当時の平尾先生の傑作品種と言って良いと思う。
1969年、平尾秀一氏作