小笹川 こざさがわ KOZASAGAWA
江戸系 中生 水色を含むごく薄い紫色の地に紫脈が少々入り、鉾はやや色のある薄紫色の三英花。
花径はおよそ14cm程度の中輪。草丈は100cmを越す。性質、繁殖は良い。
平尾秀一氏が1975年頃に作出した品種。さわやかでやさしい色彩でたくさん咲かせると美しく、花菖蒲園向きの
品種である。よく普及しており、全国の園で見られると思う。
花菖蒲を育種する人は、今でも少ないが全国にいる。タネを蒔けば2年目には花が見られるので、育種といっても
そんなに難しいものではなく、多くの実生花の中から、気に入ったものを選ぶ楽しい作業である。しかし、やはり手柄
というか、今までに無い豪華なもの、派手なもの、美しいものを作りたがり、その結果、良いものが出ない、出ても性質
が弱く増えないなどの悩みが出てくる。
しかし、考え方を変えれば、たとえば花はそんなに豪華でなくても良いから、丈夫で草丈が高く繁殖がとても良い品種。
とかに絞って、その場合は、そんな性質を持つ品種同士を交配させれば、そんなに肩をはらなくても良いものなど出来て
しまう。この「小笹川」もそうだが、平尾先生も良い花を作るぞと意気込んで作った花ではなく、タネをまいて咲かせてみたら、
群れて咲いた姿が爽やかで美しかったから名前を付けたという感じがする。そしてまた、こういう品種は丈夫で繁殖が良い
から、いつまでも残るのである。皮肉なことに、見事なものをと意気込んだ作品は、性質が弱く絶えてしまったりするものである。