黒竜獅子　　　こくりゅうじし　　　KOKURHU JISHI

肥後系　　　中生　　　ややくすんだ青藤色の八重咲き。花径は12ｃｍ程度の中輪。
黒雲から竜が昇る「昇　竜」や、絶種した「獅子奮迅」からの連想でこの名前を付けたが、
系統を肥後系にしてしまって、後で江戸でもよかったと悔やんだ思いがある。
確かにどちらにでも見え、系統という区分け自体、現代の花菖蒲には意味が無い気もするが、
古来からの区分け方をいきなり変えても、混乱を招くだけなので、未だに系統で区分けしている。
伝統的には、肥後系や伊勢系には古来から規格があるので、例えば八重咲きは昔は江戸系
には存在しても肥後や伊勢では認められなかったので、その区分けからすれば本種は江戸系
なのだが、既に前例として「新朝日雪」や「桜獅子」などがあるため、今更それを持ち出すわけにも
ゆかず、結果、現代の品種については、その花が何系なのかは、作者が江戸だと思えば江戸、肥後
だと思えば肥後といった、きわめて主観的な判断で決めているだけの、あまり意味の無いものである。
系統などなくしてしまうのも一つの方法だが、それもままならず、この先も系統区分けは続くのだろうと
思う。
１９９２年、加茂花菖蒲園作