郭公鳥   かっこうどり
KAKKO DORI

長井古種   中生   紅紫地に濃紫脈の入る三英。花径はおよそ10cm程度の小輪。草丈はおよそ70cm前後。性質、繁殖は普通。

長井古種の一種で、戦前から長井市のあやめ公園に植えられていた品種とされている。

名前はカッコウの鳴く頃に咲くからだろうか。東北や北海道にノハナショウブを見に行くと、たいてい近くの林からカッコウの鳴き声が聞こえた。
「カッコ花」とは、東北地方での花菖蒲の古い呼び方の一つだそうだが、山間の沢田でカッコウの鳴き声を聞きながらノハナショウブを見たりしていると、この名前の方がぴったりしているように思えた。


また、花菖蒲の古い呼び名の一つに「花かつみ」があるが、この「かつみ」とは、一般にはイネ科のマコモを指し、マコモの実は救荒食物でもあったそうで、かつみとは「糧実(かてみ)」から来たものだという。そして東北地方では、むかしかつみを「かつぎ」や「かつご」とも呼んだということだが、もしかしたら「かっこ花」はここから来たものかもしれない。


花菖蒲以前の古いこの花の呼び名である「かっこ花」や「あやめ」や「花かつみ」については、記録されている文献が少なく空想の世界でしかないが、まぼろしの「みちのく安積沼の花かつみ」をさがし尋ねるようで、それはそれで面白い。